本日、臨時議会最終日でした。住民直接請求により出された災害対策基本条例については反対しました。賛成なしで否決されました。
松島の討論要旨・・・・時間と費用がかかる条例制定よりも地域の特性にあった計画の見直しと計画がしっかり実施できるようにするほうが災害対策には役立ちます。広域避難場所については指定後、見直しをして来なかったことは事実であり、不十分でした。そのための対策が昨年12月に市議会で可決した「茅ヶ崎市大規模地震火災対策検討事業」です。現在進められています。
以下、全内容です。
平成29年第1回茅ヶ崎市議会臨時会討論
議案第1号 茅ヶ崎市災害対策基本条例について
最初に直接請求を提出をされた方々、関係された方々が直接請求に必要な有権者数の1/50の4018人を大幅に上回る有効署名数8912人分の署名を集めて提出されたことについて、まずは、敬意を表することを申し上げます。皆様の思いは重く受けとめますが、賛成は致しかねますのでその理由について討論をしました。
1 条例を制定できる要件を満たしていない
地方自治法 第十四条により、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができます。しかし、今回提出された条例は国の法律や市の計画との整合性がなく、条例の要件を残念ながら満たしていません。国の災害対策基本法と照らし合わせると齟齬があります。とくに、政令で定める災害の原因である、放射性物質の大量の放出、多数の者の遭難を伴う船舶の沈没その他の大規模な事故が今回提出された災害対策基本条例の災害の定義から抜けていることは見過ごすことができません。事故は起こってはならないことですが、放射性物質の大量放出に関連するであろう浜岡原子力発電所からは直線距離で約140キロ、原子力空母がある横須賀港からはわずか約23キロしか私たちのまち茅ヶ崎市は離れていないことは常に忘れてはならないことです。市ではこれらの事項を地域防災計画に位置付けて既に計画策定をしています。
2 多様性のある少数の方々のご意見が取り入れられておらず、行政等との協議調整などの議論が不足している
参考人の方々との質疑の過程で条例文を作る時の「参加はあまりなかった」要配慮者や障害者や様々な多様性を持つ市民の意見聴取についての質問に対して、「実際に会って聞いてはいない。障害者の方々とかかわりがなかった。」等のご発言がありました。
障害者基本法 第3条では、「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」とあります。市では条例制定や公共施設の建設などその他あらゆる機会をとらえて最初の段階から参加する機会が確保されるように努力をしています。この努力は皆様へは見えにくいかもしれませんが知っていただきたいと思いますし、これを機会に行政は障害者基本法の啓蒙活動を強化しなくてはならないことも申し添えます。
また、条例を運用するのは行政です。行政 執行部との協議なくしては条例制定はできても条例は運用されにくく機能しません。条例制定をするうえで執行部である行政との協議は不可欠なのです。今回提出された条例については直接請求者と行政との協議は一度もなかった事を聞き取りました。執行機関である行政との協議もないまま提出された条例は実効性のある条例とはならないため、この点でも賛成できません。
3 時間と費用がかかる条例制定よりも地域の特性にあった計画の見直しと計画をしっかり実施できるようにする事の方が災害対策には役立つ
条例を作るためには時間とお金と労力がかかります。茅ヶ崎市自治基本条例の検討委員会は市民参加で行われました。市民の皆様のボランティアでの参加で行われました。期間は4年8か月、会議回数は約300回。長すぎた事やファシリテーターや学識経験者を最初から入れてほしかったという意見も出された報告書が出ています。災害対策基本条例制定に向けて今後、行政が動き出すとすれば最低でも2年位、会議回数100回ぐらいは必要になろうかと思います。
広域避難場所については様々なご指摘、ご不安のご意見をいただいていたことから、昨年末に市議会では「茅ヶ崎市大規模地震火災対策検討事業」実施の補正予算を可決しました。
「災害への認識が非常に甘い。地域の特性や実情を活かした命を守る姿勢が薄い。」というご指摘を頂きました。広域避難場所については指定後、見直しをして来なかったことは事実であり、不十分でした。そのための対策が「茅ヶ崎市大規模地震火災対策検討事業」です。
この事業については行政側と充分、議論をして参りたいと思います。この事業内容は、広域避難場所として指定をされてから長い年月が経って住環境や人口が大きく変化している広域避難場所の指定は現状のままで果たして適当か検討を行います。たとえば、茅ヶ崎ゴルフ場を広域避難場所として指定されている地域は、鉄砲道北側の若松町、ひばりが丘、幸町などJR東海道線沿線までも入っています。私は以前、若松町に住んでいましたので、状況がよくわかります。若松町から茅ヶ崎ゴルフ場の手前にある浜須賀小学校まで小学校低学年の子どもの足では約50分かかりました。私が子育てをしたその当時は一斉メールなどはなく、台風などでの休校のお知らせは学校からの連絡網での電話連絡でしたが、連絡が来た時点で、すでに子どもたちは学校へ向かっており、あわてることが度々ありました。大災害時に広域避難場所から遠いこれらの地区の方々が無事に茅ヶ崎ゴルフ場まで避難できるのでしょうか。当然これだけの距離を移動できない方もおられると思います。そのようなことを踏まえて、現在、すでに広域避難場所の指定についての再検討が始まっています。
今回最も主張されている広域避難場所、一人当たりの最低面積を2㎡以上にする事だけでは大火災から命を守ることはできません。生き延びるためには大火災から逃れて広域避難場所までたどり着くことが第一に必要です。
それぞれの地域の方が大火災から逃れるためにどんな避難をすればよいか、安全地帯であるどの広域避難場所までたどり着くことが可能かなどの対策を検討する事業が「茅ヶ崎市大規模地震火災対策検討事業」です。
東日本大震災では、津波から逃れるために多くの方々が高台へ命からがら避難しました。狭い場所で身を寄せ合って救助されるまで過ごされた方も数多くいらっしゃいました。茅ヶ崎市南部の大火災の被害想定は大変厳しい状況で、今のままでは広域避難場所へ多くの人々がたどり着くことができない状況も予測されます。今進めている「茅ヶ崎市大規模地震火災対策検討事業」をしっかりとすすめ、しっかり運用できるようにすることが重要であり、条例には賛成できません。
4 最後に
条例制定請求代表者の方々から貴重なご意見を議会でいただいた中で「茅ヶ崎ゴルフ場の事がきっかけであり、茅ヶ崎ゴルフ場の事があって時間がなかった。条例をやるしかなかった。」とのご発言がありました。
今回の直接請求の主な理由は、市民全体の防災対策というよりも茅ヶ崎ゴルフ場の広域避難場所としての機能を守ってほしいということが主な理由であるという事情が明らかとなりました。残念ながら出された条例がたとえ制定されたとしても茅ヶ崎ゴルフ場の広域避難場所としての面積を守ることにはつながりません。
いまの状況の中で倫理的にはできない事だと思いますが、万一、茅ヶ崎ゴルフ場が売却されて開発事業者の手に渡り、法に従って開発されれば市としては止めることができません。茅ヶ崎ゴルフ場の用途地域は周辺の住宅と同じ第一種低層住居専用地域ですので良好な住環境を守る地域として一般住宅を建てることができますので、巨大な新たな住宅街となり、大規模地震火災では未曽有の被害につながることは確実です。そうならないように土地所有者の県などと政治的な協議をして市民の命を守るために緑を残すようにしなければならないのです。今回の直接請求をなさった皆様のご活動はそのための大きな威力になります。茅ヶ崎市民の思いをしっかりと県には伝え、協議していただくことを企画部には要望しました。
★☆彡「何の事だか、さっぱりわからないよ。」というご意見をいただきました。ありがとうございます。臨時議会が開かれるまでの直接請求の経過、内容、議案書については茅ヶ崎市のHPのここにあります。